社会福祉法人武蔵野療園
武蔵野療園病院
介護医療院
令和6年2月16日
薬との上手なつきあい方
in かみさぎことぶき会
始めてかみさぎことぶき会の皆さんに招かれて、高齢者のお薬との付き合い方についての講座を行いました。
当日は30名近い皆さんにお集まりいただき、質問も多数いただけるなど終始和やかな雰囲気で進行しました。
【すべての薬には副作用があり、相互作用があります】
飲んではいけないお薬はありませんが、必要以上の量や種類の
お薬を飲むことによって薬の害が起きやすくなります。
その為、服用するお薬のメリット・デメリットを良く理解し、
服薬は必要最低限にしたいものです。
また、お薬には「プラセボ効果」がありますので、飲まなくては
ならない薬なら信頼して服用することで効き目もよくなります。
【高齢者の薬の副作用として多いのは「せん妄」です】
せん妄とは、何らかの理由で一時的に意識障害や認知機能の低下が生じることです。
脳内の神経伝達物質の不均衡が関与しており、場所や時間がわからなくなったり、無いものが見えたり
する症状が現れますが、認知症とは異なります。
高齢者の脳は、加齢変化によってせん妄が起きやすくなっていると考えられます。また、せん妄を引き
起こす原因として多いのは薬剤だと考えられており、代表的なものは「抗コリン薬」です。
抗コリン作用を有する薬は多数あります。せん妄が起きた時は、原因となっている薬がないか確認し、
服薬量の調整や中止、他の薬への変更等をおこなう必要があります。
しかしながら、せん妄に対処する為に認知症薬や抗精神薬を追加してしまう場合があります。このような
薬の副作用に対して他の薬を処方してしまうことを「処方カスケード」といい、ポリファーマシー(必要
以上の多剤併用)の原因の一つとなっています。
高齢者の方は多くの医療機関や科目を受診する為、それぞれから処方されるお薬が重複してしまうことも
ポリファーマシーの原因となりえます。
【入院患者さまのお薬は6剤を目標に減薬を心がけています】
高齢になると、特に腎機能低下によって薬剤の体内蓄積が起こりやすく、若い時とは
薬の効き方が違って効きすぎてしまいます。
睡眠の質も変化して、睡眠薬を服用してもあまり効果がないばかりかせん妄の原因と
なります。
低血糖を起こしやすくなりますので、血糖値の目標値も高くなり、血糖を下げる薬の
減量が必要となります。
食生活の変化によって降圧薬、脂質異常の薬も従来通りの量はいつしか不要になって
いるケースが多くあります。
疾患を根治するのではなく、上手く付き合っていくという高齢者の医療の目標という
観点から不要になる薬剤もあります。
当院では入院患者さまのお薬は減薬を心がけておりますが、患者自身が自己判断でお薬を中止することは
危険です。その為、係りつけ医や薬剤師に「薬が多くて飲みきれない」「薬が余っている」などと率直に
ご相談して下さい。
多くの疾患は生活習慣病です。生活習慣を改善することで薬に頼らずとも軽快できる可能性もあります。
一人一人が薬を必要最低限にすることは、副作用を防止するためのみならず、大量残薬の問題を解消し、
医療資源を効果的に使うことにも繋がると考えられます。
薬が6剤を超えると副作用の頻度が高くなるといわれています。
ポリファーマシーに陥る理由として以下の3つが挙げられます。
・多受診:複数の診療科、 医療機関を受診し投薬されている。
・処方カスケード: 薬の副作用を新たな疾患としてさらに薬を処方されてしまう。
・患者の要望: 薬をたくさんほしいという患者の要望に応じて薬が処方されてしまう。